12 マニエリスムとアカデミズム ハイパーメディア・ライブラリーとライティング3 + あとがき いいだ つとむ
カノンと自由
- ハイパーテキスト化したデータを駆使して行うライティング = マニエリスム
- カノン
- 固定化した手法によって先行する作品の模倣を積み重ねる
- マンネリ
- レデイメイドの形式は、創造のさまたげにならない
- アカデミズムの出発点
- 学術雑誌に掲載された論文は引用の連鎖の中に組み込まれている
- なぜ(社会科学や人文科学の)学者は引用に満ちた「マンネリ化した」論文を書き続けるのか
- アカデミズム:マニエリスム ≠ パッチワーク
- 自由
- 作成したデータベースを使って、今までには存在していなかった別の知識体系を構築してみせる
- 学者が論文を書く
- 既存のカノンで体系化されていた知識に新たに別の関係を与えることによって獲得される
- 複雑に複数の体系を可能にするノレッジ・ベース
- ハイパーテキストによって構成されるデータの宇宙
- コンピュターを使ったエクリチュールを可能とするハイパーメディア・ライブラリー
- カノンと自由の二重の原理を備えた
- アカデミズムのための「思考のエンジン」
- コンピュータ化されたライティングの世界
- 21 世紀のマニエリスム
ミメーシスの破壊と人工的現実
- マニエリスムが目指したもの:
- 「虚構の世界のきわめて自然らしい再創造」
- コンピュータを使った表現活動の真髄
- マニエリスムの面白さ
- 絶対的なるものの存在を笑うニヒリズムに陥ることなく
- このミメーシスのもつ、「自然らしさ」の神話を破壊したことである - コンピュータをマニエリスムの迷宮世界を操るマシーンへと変化させた
- 「神の創ったものを模倣」するのではなく
- 「神の創造を模倣」することが可能になった
- コンピュータの作り出す環境の中で
- この世界はリアリティを持ち
- 極めて自然らしい姿を見せる
- ミメーシスを破壊しつつ人工的現実を作り出す
- ハイパーテキストを備えた思考のエンジンの姿である
- 新しい種類の実証主義
- コンピュータによってデータを完備し
- 様々な政治・経済・イデオロギー的理由によって「現実」されていたミメーシスを破壊するために
- 新たな人工的な現実を構成する
- 多様な事実からいつくかの体系が構成されることを検証する
- カノンに縛られず
- 一方でカノンなしには存在が不可能な滑らで自然な
- しかし人工のディスコースを作り出す
- 各々の本の背後にある思想を探し出す
- ハイパーテキストを備えたコンピュータを使ったライティング
認知コンピュータとライティング
- 人間とコンピュータは本当の意味で会話ができるのだろうか
- 「起業家大学」
- 大学を起業家集団のようなものにする
- 教授の作品をマーケットで売る
- コンピュータを駆使した大学が、知的にも経済的にもまるで起業家のように自立しているイメージはなかなか気持ちがいい
迷宮としての知識と人工的現実としての書物
- 起業家的大学では、迷宮のような知識と複雑なネットワークが大学の中に張り巡らされている。
- マニエリスムとアカデミズムの融合した
- ハイパーメディア・ライブラリーとキャンパス・ネットワークからなる大学
- 迷宮の中から、ときとして明るく輝く輝く人工の産物が作り出される
TsutomuZ.icon 錬金術を意識しているようだ
- コンピュータは
- 複雑な世界を簡単な手続きを多量に行うことで把握しようとする目的のために最初は導入された
- 複雑なものを複雑なままに扱うためのマシーンとして使われ始めた
- 我々の世界が複雑なことを知った上で人工的な整理された構築物を指向する
- そのためのコンピュータは
- 認知コンピュータであり
- ミメーシス製造機であることをやめた
- 新しい種類の機械だ
- ワードプロセッサーを使ってコンピュータによるエクリチュールを覚えた我々は
- ハイパーメディア・ライブラリーの中の知識の海への
- 航海をいまにも始めようとしている
TsutomuZ.icon 航海という表現が著者のお気に入りのようだ
あとがき
- 文章を書くってなんだろう。本書はこの疑問が出発点である
- 本書では人間がものを考え、書くという作業を支援するソフトウェアとはなにか、について考えてみた。
- 人間にとって書くとは、考えるとは、どのようなことであるか、を考えている僕がいて、コンピュータを実際に動かしている僕がいる。この条件で『現代思想』に一年の連鎖をした。それをまとめたのが本書である。
- 本書は『物書きがコンピュータに出会うとき』の続編でもある。
- 本書は、16ビットのコンピュータを使って、エクリチュールと思考の問題を考えた。